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江戸時代まで、伊勢には、神宮信仰を説き、参拝客をもてなす御師(おんし)という身分の人が多数あり、全国に檀家をもっていましたが、1871年、明治政府により廃止されました。そのため、失職した旧師職の有志が、美濃や土佐より和紙の職人を招き、その技術を習得して製紙工場を始めました。これが今日の伊勢和紙の源流です。神宮大麻用紙(御神札用紙)奉製の特権を得て、その全量を奉製をすることとなり、1899年には、有力な3つの製紙会社が統合して神都製紙株式会社となりました。
1947年に大豐和紙工業株式会社と改名し、現在に至っています。こうして100年以上にわたり、神宮のお膝元伊勢の地で、神宮御用紙を中心に各地の神社の御神札、御守りとなる紙を、原料を精選し、清浄を旨として、丹念に奉製してきました。神宮、神社ごとの特有の文様を漉き込むのが大きな特徴です。
1994年、三重県の伝統工芸品の指定を受け、伝統の伊勢和紙に、海と山の恵み豊かな伊勢ならではの工夫を凝らした、杉皮紙、海藻紙などの工芸紙を開発し、好評を得ています。また、近年の情報技術の普及にともなって、インクジェットプリンタに対応できる和紙の開発、生産にも力を入れるなど、新しいとり組みをしています。
2002年には、エプソン・ピエゾグラフ・ラボラトリの協力で、写真家の中野晴生さんの写真展や灘本唯人さんのイラスト展を、伊勢和紙を使って開催しました。
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