キーワードは「『原料』と『和紙を作る過程で使う薬品』」。

 紙は細長い繊維がたくさんからみあってできていて、繊維と繊維の間に無数の空隙(すき間)がある多孔質のものです。水滴を紙の上に落とすと、すぐに吸収してしまいますが、親水性(水になじみやすい性質)をもつ繊維と多孔質による毛細管現象によるものです。

 紙によってにじみが違う原因の第一に、原料が考えられます。大麻のような厚い膜をもつ繊維では、空隙の多い紙ができ、水の吸収が大きくなります。逆に膜の薄い雁皮などは空隙が少なく、水の吸収が少なくなります。

 また、同じ繊維でも叩解度を高くすることで繊維はやわらかくなり、繊維間の接着が多くなるので、空隙が少なく、にじみの度合いは小さくなります。

 原因の二つめは、和紙を作る過程で使う薬品が考えられます。特に煮熟に使う薬品が水の吸収やにじみだけでなく、紙力にまで大きな影響を与えます。木灰や炭酸ソーダなどのアルカリの弱い煮熟剤を使った場合は、繊維の間に非繊維物質が多く残り、繊維間の接着を強め空隙を少なくします。そのため紙は少しかたくなりますが、にじみも少なくなります。

 紙を漂白することに主眼をおき、アルカリの強い苛性ソーダで煮熟した場合はこの逆で、漂白すればするほど非繊維物質が分解され、溶け出しますから、にじみの多い紙となります。

 紙にインキで文字を書くと、たいへんにじみます。そのため和紙の使用目的によってにじみを調節する方法として、サイジングをします。紙の表面に施す方法を表面サイジングといい、紙内部の間隙を耐水性物質(サイズ剤)でふさぎ、水の浸入を防ぐことを内部サイジングとい
います。

 このサイズ剤には、ニカワ、ロジン、デンプンのほか合成樹脂その他が使われます。

 表面処理をする方法の代表的なものが、ドウサ引きといわれ、二カワとミョウバンを混ぜ合わせた液を紙に刷毛で塗る方法です。この方法をとった紙はにじみがほとんど止まり、かな書道用紙、日本画用紙または特殊な印刷用紙などに使われます。

 また、紙を漉く前の紙料にサイズ剤を入れ、にじみをおさえる方法の代表的なものがロジンサイズです。紙料をかきまぜながらロジンを加え、あとで硫酸アルミニウム(硫酸バンド)を添加し、繊維上にロジンを定着させます。しかし最近では、定着剤に使う硫酸バンドが紙の劣化の原因となるためそれを使わず、中性または弱アルカリ性のサイジングの方法がとられています。

 

:: 追記 ::
「ドウサ」という用語は、ミョウバンのことをオランダ語で「ドウス」と呼びますが、それを日本において「ドウサ」と聞きかじったことに由来すると伝えられています。

 

(大川昭典)
             

※参考文献『和紙の手帖』p56-57 全国手すき和紙連合会発行

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