いつまでも古書や本を美しく保存するために気をつけたいこと。

虫食いや染みを防ぐ方法を,それぞれに分けてご説明いたします。

 

1.「虫食い」

古文書を取り出すと,虫に食われて穴だらけになったり,本を壁際に積むと背表紙が虫に食われてボロボロになることがあります。
その理由は紙を食害する虫が原因です。主に次の4種類の虫が考えられます。

● ヤマトシミ
最も頻繁に見られ,暖地ほど個体数が多い。書庫などに住み,糊付けした和紙を好む。紙魚(しみ),きらむし,箔虫(はくむし)などと呼ばれている。

● ゴキブリ
シミ同様,糊付けした和紙を好む。本の背表紙を特に食害する。

● シバンムシ(死番虫)
体長3ミリメートル内外の小型の甲虫で,フルホンシバンムシは,昔から古本の害虫として有名。シミのように糊付けした部分を食害するのではなく,本にトンネル状に穴を開けて食害する。

● シロアリ
イエシロアリやヤマトシロアリが人家/木造建築物に害を与える。最初から本に来ることはないが,建物から移動してくる。


これらの昆虫は,暗く,湿気のある所を好むので,本の保存は明るく,通風を良くすることが大切。すでに虫がついている文書は,風通しの良い所で陰干しし,虫を除去してから防虫剤と一緒に保存する。防虫剤は,衣類用のナフタリン,パラジクロルベンゼン等がよい。

 

2.「染み」


大切な掛軸や額に茶色い斑点が所々にできると閉口しますが,その原因は大別して二つ考えられます。


● その1:湿紙の乾燥時に使用した鉄板によるもの
濡れ紙を鉄板に張り付け熱を加えて乾燥させるが,そのとき,わずかな鉄分が紙に移るため,長い時を経て,その鉄分が酸化して染みになって現れる。今では鉄板からステンレスを使用することで,この問題が解決されつつある。

● その2:微生物によるもの
原料中に含まれていたものや,大気中の微生物があとから付着し,適当な温度や湿度が与えられて,条件が整えば紙の上で活動をはじめ,菌糸を生じたり,菌株が有機酸を生成したりして,その部分が褐色斑点の原因となる。

 


大切な紙を染みから守るには,できるだけホコリを付着させず,湿度から守ることが大切です。

※参考文献『和紙の手帖』(全和連発行)

 

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