【三椏の紙】
三椏はジンチョウゲ科の落葉低木で、繊維の長さは約4mm〜5mmで、幅は0.02mmです。光沢があり、できた紙は、緻密で平滑、印刷適性に富んでいます。枝が3つに分岐するのが特徴で、三段、三又と書いてあるものもあります。紙の原料として使われたのは、雁皮、楮より新しく、江戸時代からといわれ、楮に混入して使われていました。主に紙幣用紙、金糸銀糸用、版画、書道用に使われています。

横野和紙の津山箔合紙
美作(みまさか)地方(岡山県)で豊富に採れる三椏を原料として、一本一本ていねいに白皮にした三椏100%の未晒の紙です。津山箔合紙は金箔と金箔の間に挟む紙で、石灰煮熟をした全くの中性紙でえすから油気はなくしなやかな紙質です。近年では、木口(こぐち)木版画、エッチング等にも広く愛用されるようになりました。また古文書の修復等にも使われます。
図引紙
高知県伊野町の図引紙の生産はm明治末期にはわずか20槽にすぎませんでしたが、その後百数十槽に増加、土佐特産の図引紙として全国的に有名になりました。昭和25年ころから機械抄きがあらわれ、生産は減少しました。原料は三椏。紙にねばりがあり、透明度が高く、長く保存ができます。乾燥後、ドーサを引いてインキ止めを行ない、紙の上下を亜鉛版で挟みロール仕上げを行ないます。主に製図用紙ですが、戦時中は軍艦の製図用、オフセット印刷用紙などにも使用されました。なおドーサとは膠(にかわ)、松やに、みょうばんを混合したものです。
土佐和紙の清光箋
漉場は高い山の傾斜地にあり、漉場と干場の高さが違い、漉き上げた湿れ紙を干場にかつぎ上げるような困難な自然の環境の中で、清水をみたした晒場(太い竹で編んだ簀を敷き、清水をみたした池状の水洗場)を築き、日光を利用した川晒し漂白を行っています。この地域はまた上質の三椏の産地でもあります。三椏100%の原料を石灰煮熟、川晒しをして天日漂白を行ない、打解機で叩解したのち、小振機で攪拌して繊維を分散させ、ネリにトロロアオイを用い、萱簀で流し漉きを行ない、板干しで天日乾燥します。楮で漉いた紙は清張箋とよばれています。
石州和紙の三椏紙
原料の三椏は、地元産で白皮加工も全て自家製で、なるべく若い刈ってから2年目くらいの親指大の原木を使います。白皮にして1年〜2年寝かせた原料を使います。煮熟は、ソーダ灰11%にて、1時間30分〜2時間。三椏は歩留りが悪いため繊維を逃さないようにするために、水洗、灰汁抜きはなるべく簡単にします。ちり取りも1回できれいに取るようにします。叩解はホレンダービーターにより、竹簾で流し漉き、板干しをします。用途にもよりますが、三椏は、紙にするには割合に楽とは思いますが、奥が深くまだまだ研究してみたい紙です。例えば、三椏の短い繊維の間により小さいシルクの繊維が交わることによって、すばらしく光沢が増し、肌合いが良く筆の走りも良い和紙となります。
TOP 全国産地マップ 和紙と和紙の製品をさがす 産地の情報とインフォメーション 和紙について知りたい 全国手すき和紙連合会の出版物 全国手すき和紙連合会とは