■越前和紙への提言 横山祐子さん(伝統工芸プロデューサー) |
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有限会社縄文社代表。シンポジウム、研修旅行、展覧会、講演会、本作り企画などを通して、日本の伝統工芸を国内外に紹介し応援するしごとに永年携わっている。伝統工芸に精通する学芸員のような丁寧な解説や情報作りには定評がある。近年、職人を巻き込んでの海外草の根手仕事文化交流に力を入れている他、現代生活にもオシャレに活かすことのできる「日本のてしごと」作品をネットで紹介販売中。
http://www.handmadejapan.com |
「世界のハイセンスな人々に向けて」
●日本を雄弁に語るものたち
私は70年代から仕事の関係でニューヨークに住み、日本と行ったり来たりしていたのですが、渡米して初めて日本文化をよく知らない事に気付いたのです。帰国後、伝産協会の当時の兼崎専務理事の音頭で「伝統的工芸品国際化研究会」を有志で立ち上げました。80年代後半当時は、伝統産業も国際化ということが叫ばれ、私はその事務局として、企画運営に関わることになりました。
その時のひとつのプロジェクトに「土佐和紙」があり、文化財修復研究の方、流通の方、外国人や老舗の方などに参加していただき、財団から助成金を受けてシンポジウムを企画しました。このような経験から、物を通して文化を理解してもらうのが分かりやすいと感じたのです。物は抽象でないから説明しやすい。外国人に工芸品を見せて、こういう物を美しいと思う国民なんですよ。例えば、漆というのは樹液で、漆の伝統工芸品はこのような歴史をもち・・・という具合に、物を通して日本を語ることができるのです。
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●伝統産業の本作りの仕事
本作りのきかあけとなったのは、ダイヤモンド社の60周年記念の出版企画でした。日本の伝統工芸品を収録した日本語8巻、英語8巻、ビデオ4巻から成るもので、トヨタ自動車などの日本企業が買い取って下さり、海外の図書館や学校に寄付して下さいました。その英語の翻訳を引き受けたのですが、専門知識を必要とする翻訳のため、各分野を研究している海外の学者を捜し出し、コンタクトを取り、十数人の翻訳チームを組んで作業しました。今のようにメールもない時代ですから大変で、2年ほどかかりました。けれども、そのセット本は普通の日本人の手に入る物ではないので余りにももったいないと思い、外国人へのお土産に使って頂けるような4〜5千円の本を作りたいと考え、出版社に写真を使わせて頂けないかと交渉しました。そうしてできたのが伝統的工芸品英文紹介書『Janapese
Crafts』(講談社インターナショナル刊)です。 |
府川次男さんに習った和綴り本 |
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イギリスにて、参加者に
時代箪笥の説明をする
木戸良平氏 |
●草の根手仕事交流
日本人も伝統工芸品について知らない時代になってきました。新宿のリビングセンターOZONEは立ち上げから関わっていあmすが、OZONEでは、素材別(木工、指物、和紙、漆・・・)やテーマを設定した展覧会の企画を手掛けました。そのうちに何だか「伝統工芸おばさん」みたいになってしまって・・・(笑)
インターネットでの販売は、私の好きな工芸家を選んで紹介し、ゆっくり販売しています。handomadejapan.comは一日に50万ヒット(平均700人、日本人が70%)あります。 |
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ここ数年来続けている、職人さんの海外での講演やワークショップ、展覧会を開く仕事は、本当に草の根手仕事交流という感じなのですが、作品を販売しようとか、日本文化を宣伝しようというよりは、職人さんに何か感じてもらえればいいと思っています。私は職人さんを応援したいので、2週間くらい自分の職場から離れて、異国での様々な生活スタイルを見たり、手仕事の成り立ちも違う所があるのだと感じてもらうことも、時には必要だと思っているのです。つい最近は、時代箪笥の職人さんに、イギリスのヘイ・オン・ワイという所に行って頂きました。
●世界のハイクラス層を狙う
越前の和紙は、高級品で通っていますが、高級品は下へ向かって広げようとしても難しい。市場スケールを広げようと思うと、どうしても単価競争になりますから、安い物、質の低い物に流れていく競争になってしまうのです。購買層のピラミッドで、収入があり審美眼を持っている層は、日本では限られるかもしれませんが、世界を射程に入れればけっこう大きな層になります。世界のハイクラスな人たちは文化的にも開かれているし、海外旅行の経験も多く、知識も豊富です。こういうところに日本の工芸はまだ上手にアプローチできていない。海外に、全国の和紙見本があり、情報も得ることができ、販売もできるような和紙ショールームがあれば、次第にこのマーケットを広げることができるかもしれません。和紙で版画やシルクスクリーンを刷る人も多いですよ。
私は昔から和紙ファンなのですが、山荘の壁を和紙の袋張りでしつらえました。和紙の壁は、空気を蓄えるので独特に心地よいですね。ロールカーテンも和紙に柿渋を塗ってもらって美しい赤い光を楽しんでいます。 |