用途によってさまざまな種類の和紙があり名称があります。

むずかしいと思われがちな和紙の名称をご説明します。


■檀紙(だんし)
奈良時代にあらわれ、つねに高板紙の地位を占め、現代でも儀式や包紙に用いられます。最も寿命の長い紙名。平安時代には歌を記す懐紙に使われ、女性に「みちのく紙」とよばれた楮紙。現代のような皺入りものは新しい。

■杉原紙(すぎはらし)
中世を代表する楮紙で、武士や僧侶が贈り物に盛んに用いました。平安時代末に播磨国椙原庄(兵庫県加美町)からおこったのが紙名の由来。武士は檀紙でなく、杉原紙に書くものとされたが、江戸時代に大衆化しました。

■奉書(ほうしょ)
中世に越前からはじまり、特に江戸時代に公用紙として盛んに使われました。高級な楮紙。古文書の形式に、将軍の命令を奉じて下の者の名で出す奉書という書式があり、次第にその奉書を記した高級紙をも奉書とよびました。

■鳥の子(とりのこ)
雁皮紙の一種で、中世にあらわれた紙。この紙の未晒し色が、鶏の卵のような淡黄色をしている為つけられた紙名といわれます。中世では越前鳥子という記述が多いので、越前紙からはじまったものとみられます。

■間似合紙(まにあいし)
雁皮紙の一種で、襖紙や書画用紙として使われます。襖の半間の幅(三尺・約九〇センチ)に継ぎ目なしに貼るのに間に合うという意味の紙名で、 中世からはじまり、越前紙と名塩紙の特産で、今も西宮市名塩に残ります。

■泉貨紙(せんかし)
二枚合わせの強靭な楮紙で、江戸時代に宇和島藩(現在、愛媛県)が奨励して広まりました。愛媛県野村町の安楽寺の僧の泉貨居士が工夫したところから紙名が生まれ、細かい簀と粗い簀で漉きあげた二枚の湿紙をすぐに一枚に合わせて乾したものです。

■西の内紙(にしのうちし)
水戸藩特産の楮紙で、産地名の茨城県山方町大字西の内に由来します。同じ優秀な那須楮を使った烏山藩の程村緻(栃木県烏山町字程村に由来)と並んで高く評価され、特に明治時代の選挙用紙として有名です。

■宿紙(すくし)
文字を書いたりした反故(ほご)紙を、再び原料の繊維にもどし、漉きなおした紙。墨が十分に脱色できないものを薄墨紙(うすずみがみ)、水雲紙(すいうんし)とよびました。故人の手紙を漉きなおした還魂紙(かんこんし)、あるいは都会の大量の反故紙を再生した日常生活の紙も含まれます。

■画仙紙(がせんし)
本来、中国からきた紙をいいます。中国の紙が手に入りにくくなった昭和二十年代に、三椏紙の産地を中心に竹・稲・木材など各種の原料を配合して中国風の書画用紙を漉きはじめ、因州画仙紙(鳥取)・甲州画仙紙(山梨)などと発展し、和画仙ともよばれます。

■局紙(きょくし)
明治中期の大蔵省紙幣寮抄紙局の手漉きの工場で、滑らかで紙の腰が強く、印刷効果の良い厚紙(はじめ雁皮、のち三椏原料)を工夫したもので、フランスなどに美術印刷用紙として輸出されて評判をよびました。のちには、木材パルプによる模造紙まで作られました。
 

※参考文献『和紙の手帖』(全和連発行)

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