06.05.12up

高志(こし)の生紙便第9号が届きました。一部をご紹介します。
 
名残つきない春の雪です。
弥生末日の今日も寒気の中、横殴りの雪が厳しい風景を作り出している。それでも三日は暖かな日も続き雪晒しや雪上での板干し乾燥も例年並に進んでいる。只、こうした紙がはかばかしく売れないのは残念であるが、気持ちとしては嫁に出したくない気分も半分、いずれにしろ年数寝かす毎に紙はよくなるのでじっくり使い手を待ちましょう。
そうした中で毎年雪晒しの板干し紙を注文される山田順子さんの作品展をさせて頂くことになった。実は、地元の友人の紹介でまだ本物の作品を見ていないので自分でも今から楽しみです。

4/4 門出和紙工房脇

4/4 板干し天日乾燥
二月、三重県庁の方から、グリーンツーリズム(農村体験民宿)のフォーラムにお誘いを受けて、母を連れ車で出かけた。七十三歳の母を連れ出したのは、日頃の罪滅ぼしのちっとした親孝行の真似をすること(隣りで女房が私はどうしてくれるのという目で見ている。)以外に四年前に死んだ親父(栄一)が四十年程前、愛知県で冬出稼ぎをしながら、五年間日曜日ことに通って指導して下さった、小原工芸和紙の小川喜数先生を訪ねる目的があった。
その後、自分自身も二十歳の冬、出稼ぎ先から小原村を訪ねて、三十年ぶりの小原村である。
先生は、父に「一真」という雅号を名付けて下さり、百姓の傍ら、お盆休みとか年に二〜三回程一週間くらい、美術工芸紙を作っていた。父が、生前「死んだら「紙」の一字を戒名に入れてくれ」といっていたのでお寺さんに伝えると「紙匠一真居士」と命名された。その時から、いつか先生にお会いしてご報告せねばと思っていたのです。豊田市に移り住まわれた先生は、ご病気でお会いすることは叶いませんでしたが、奥様が親切に当時のことなどお話下さりありがたかったです。
翌日、同じ頃先生の弟子であった鈴木峰雄氏をお訪ねすると「あんたのお父さんが新潟から持ってきた四季桜が先生のアトリエ脇に植えてあるので、ぜひ案内するといって連れて行って下さった。その四季桜は幹周り三尺程、四十年の桜である。
昔、我が家びかやぶき家の脇に、自分の幼い頃すでに大木だった四季桜、父が水苔を枝に巻きつけ苗木にしてあちらこちらに配っていた。
その子どもや孫木に当たる桜が、この門出集落の降雪前に花を咲かせている。ただ、我が家の桜は、蔵の脇にあったのですが、昨年の大雪で隣りの家の雪捨てに迷惑を掛けるようなので伐ってしまったので残っていない。そんな桜が、小原村にも咲いていたなど夢にも思わなかった。
枝を二本折って家に持ち帰り、仏壇の供えると何と三日目に花を咲かせたので母と驚いた。
小原工芸館では、富樫さんにお世話になり、その後、加納俊春氏をお訪ねした。故藤井達吉翁から学ばれた、「人はサルにあらず」自然素材と自己の創造を追いかける人の生き様にま、老練になられてもなお迫力に圧倒する思いであった。
夜は、三十年近い付き合いになる佐藤友泰さんを訪ねた。農家の空き家を借り受け、アマチュアとし(紙を売らない)大学職員の仕事を続けながらもずっと紙を漉き続けてきた人である。
プロの紙屋ができない、より本物の手打ち、木灰煮の紙など、たった一人で気の長い仕事をコツコツ続けている。本来ならプロがやならければならない、でもなかなかできない部分を、紙を売らない紙屋だからこそできる研究をしている彼の仕事は貴重である。
農家の荒れ果てた納屋の漉き場や紙叩きの現場を見るに付け、僕の胸に熱いものが込み上げた。
日本にまだこんな紙屋が、こんな形で残っているのだと・・・。
卯月三日
(康生五十二回目の誕生日)
「高志の生紙工房」からのお知らせ
【見学、製品ご希望のお客様】
○見学(説明)は無料です。(団体でお越しの場合は事前にご連絡下さい。)
○説明の所要時間は30分程(門出和紙のできるまでのビデオ15分含む)
○最初に工房スタッフに申し出てください。係りの者がご案内申し上げますが、作業の都合等により即対応できず、しばらくお待ちいただくこともありますのでご了承下さい。
○当工房は生産施設でもありますので、道具や原料、製品等には触れないでください。
また、作業中のスタッフに話しかけることもご遠慮願います。

【体験プログラムのご案内】
○体験は前日までに申し込んでください。(団体の場合は早めにご予約下さい。)
プログラム 詳  細 所要時間 料  金
紙漉き
(10枚以上から受付)
半紙判(39cm×27cm)便箋2枚
取判(伝統製法による素材としての紙作り)
約40分 基本料金3,000円+300円(1枚)
他 送料実費
紙流し
(5枚以上から受付)
半紙判の網枠に和紙原料を流し込む(草花を入れるなど作品としての紙作り) 約30分 1枠(1枚)500円〜
他 送料実費
折染め
(10枚から受付)
お買い上げ頂いた和紙を折りこんで染液の中に浸し染にします。(染めた紙は当日お持ち帰りができます。) 約40分 紙代 菊判(92×62cm)500円〜
基本指導料(染料代含む)御1人様300円

※紙漉き、紙流しの紙は、乾燥して後日発送となります。送料実費を含め請求書を同封しますので、郵便振替払込用紙にてお支払お願い致します。


○○○ 生紙工房の開館時間と休日
午前9時〜午後5時まで
(正午〜午後1時まで休憩)
休館日は第3日曜日と祝日


「生紙工房」と「生紙便」に関するお問合せは下記まで
越後門出和紙 小林康生
〒945-1513
新潟県柏崎市高柳町門出
Tel 0257-41-2361
Fax 0257-41-3024
メール info@kadoidewashi.com
URL http://www.kadoidewashi.com
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